時代による「台」の高さの変遷

2011.12.16

長年住宅の設計をやってきて思うに、人間の暮らし方はそう変わるものではない。だから住宅の設計も、その基本、つまり空間の流れと溜まりの配置の仕方はそう変わらないと思うが、細部では時代の影響による変化がある。たとえば台所の細部はこの二十年でずいぶん変わった。これはさまざまな厨房機器が入り込んできたことによるが、最も基本的なのは作業台の高さの変化だ。私が設計を始めた頃、台所の作業台の高さの標準は八〇センチで、既製の厨房セットはすべてこの寸法でできていた。

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ところが、「段差のある」父母の家では、母の希望で五センチ高く八五センチにした。母がそう望んだのは親戚の家のアメリカ式の台所を見ていたからで、ご存じのように欧米の厨房の作業台はさらに高くて九〇センチほどであるが、それではちょっと過激と思って中間をとったらしい。ところが今は八五センチが標準となっている。住宅史の本によると、戦前は七二センチ程度で、それが戦後一九五〇年代半ばには七五センチになってきたそうで、それから八〇センチ、八五センチと台所の作業台はだんだん高くなってきているのだ。これは日本人の体位の向上によるのかというと、そんなことはないので、その証拠に事務机の高さは低くなっている。二十年ぐらい前は机上面が床から七四センチで事務機器の標準規格(JIS)もそうだったが、かなり前から七〇センチが標準になった。これは平均身長が伸び、さらに若者の足が長くなっているのと見かけ上は逆行する現象だ。